米国の医療制度が直面している課題米国の医療制度が直面している課題
1. アクセス
2. 非効率な治療の提供方式
3. コストおよびコスト増加
4. Affordable Care Act(オバマケア)の影響

非効率な治療の提供方式についですが、まず非効率の定義は、
⑴ 効果が低く高コストな医療サービスの過剰提供
⑵ 効果が高く低コストな医療サービスの過小提供
⑶ 過剰な運営コスト: $107B~389B(11~39兆円)
⑷ 不正請求等: $82B~$272B(8~27兆円)
⑸ 治療の提供の失敗
⑹ 治療のコーディネートの失敗

今回は、(3)過剰な運営コスト について、日本歯科医療へのテーゼを記載してきます。

この点においては、米国における病院と日本の歯科診療所とは、非常に良く似ています。一言で言うなら、共に、競争優位性を確保するために重装備化をめざしてしまいやすい環境であるということです。

米国のヘルスケアのプレーヤーは、
① 雇用主
② 保険会社(民間/第3機関等)
③ 医療サービス提供者(病院/診療所)
④ 公的機関(Medicare/Medicaid)
です。

① 雇用主は魅力的な雇用条件を提供する事で、優秀な従業員を確保する為に低
保険料/好条件の医療保険を求めます。

②保険会社は、①の要求に答えつつ自分達自身の儲けを確保するため、より高品質/低コストでより効率的な医療サービス提供を実現している③医療サービル提供者との提携を目指します。

③医療サービス提供者は、より多くの②保険会社との契約を確保する為に、コスト削減/他の医療サービス提供者が提供出来ないあらゆる治療の提供/品質の向上を目指し医療ネットワークを形成します。

④公的機関(Medicare/Medicaid)は、その対象となる患者数の多さから、③医療サービス提供者との契約においてボリュームディスカウントをかけ、④から③への支払率の引き下げを図ります。同時に、②保険会社への委託も行う事で、②保険会社同士の競争を促進させます。(③保険会社と④公的機関は似た役割を果たしますが、③保険会社は最終消費者である従業員の実際の医療サービスの使用頻度をコントロールする事に長けており、④公的機関は、医療費用のコントロールに長けています。)

ちなみに、実際に医療サービスを利用する非保険者である患者は、雇用主を通じて(あるいは個人で契約していると言うケースもあります)契約している③保険会社が提携している病院/診療所(④医療サービス提供者)でしか、保険を利用して治療を受ける事ができません。これについては、今まさにオバマケアにより、改善されようとしています。

極端で煽動的すぎるきらいがありますが、Michael MooreのSickoは、②③が利益を上げる為に協同し、健康的で治療費がかからない患者の意図的選択/医療費の出し渋りをするアメリカ医療の陰の部分を描いており、医療に市場原理を持ち込みすぎることによる弊害を描いています。それもまた、米国医療が抱える問題の一つです。これについても、オバマエアにより改善が進められています。

話が若干それましたが、以上の①~④において、③医療サービス提供者は、他の医療ネットワークとの競争動機から、重装備化が進み過剰な運営コストを発生させています。日本の歯科診療所における人口対CT率の過剰に良く似ています。

それとは別に、日本の歯科医療特有の問題として、歯科医師が専門性を活かせていない業界構造も、個々の歯科診療所の重装備化を後押ししています。(参照: 米国の医療制度が直面している課題に基づく日本歯科医療への考察 2-(2) 過小提供)
さらに加えて、米国の医療提供の仕組みが優れているかと言うと、完全にNoです。高コストの医療機関程、品質が低いというデータすらあります。これについては、内部管理もままならない状態で拡大指向に走った成れの果てがデータに出たとも言えます。これもまた、過剰な運営コストの原因の一つになっています。また、日本の一部の歯科医療法人においても全く同じ事が言えます。

 

私は、日本の歯科医療に米国型の医療保険制度は導入すべきではないと考えていますが、運営効率を考えると株式会社の病院経営参画に対しては、明確な賛成派です。(参照: 米国の医療制度が直面している課題に基づく日本歯科医療への考察 2-(2) 過小提供)

確かに、この考えの先にある10年後/20年後の歯科医療サービス提供者について考えると、それはそれで米国のサービス提供者同様に、競争動機を元に重装備化が進み過剰な運営コストは発生するでしょう。しかしながら、元々、歯科においては、医科と比較した際にイノベーティブな治療の発生頻度が極端に低いため、アメニティーを抜きにすれば医療インフラへの投資に限度がある事も確かです。

その上で、歯科においては、小規模の重装備化を中/大規模に集約する事で得られるコスト削減額の方が、その先にある大規模歯科グループ同士の重装備化合戦により発生する新規コストを上回るのではないかと、感覚的に考えています。(残念ながら、統計やシュミレートに基づく判断ではありません。)

 

当ブログの読者様には、MBA受験を目指される方と、歯科医療関係者の方が数多くおられます。米国においてオバマケアが、よい結果を出せるかどうかは現段階では不明です。オバマケアの生み手の一人であるWes教授によると、Baby Stepであるとの事です。私は、この“赤ちゃんの歩みのように小さいが確実な前進である“という考え方が好きです。私自身、自分の考えを発信してきていますが、それが全て実現できるとは思っていません。あらゆる正義/あらゆる利害/政治的関係等でごっちゃくたになっている社会においては、Baby Stepを踏み出すことすら難しい。あくまでテーゼとしての記載です。意見が同じでも違っていてもよいので、真剣に日本の歯科医療について考えて下さる方が増えるきっかけになればと願っています。