米国の医療制度が直面している課題
1. アクセス
2. 非効率な治療の提供方式
3. コストおよびコスト増加
: GDPに占める割合の高さと、占有率の急速な成長
4. Affordable Care Act(オバマケア)の影響

1. 医療へのアクセスに影響を及ぼす要素
非保険適応者が生まれる理由
・ 支払い能力の非公平(不公平ではありません。)
・ 健康リスクに基づき保険会社が保険適応拒否できる
・ 健康リスクと個々人が非保険適応者に成る事を選択出来る(特に健康な人)
医療機関は、何故治療を提供するのか
・ 労働生産性を高めたいという経済的ゴール/それを加速させる借入の重荷
・ 効率を高めたいという経済的ゴール
・ 全ての人に医療を提供したいという規範的ゴール
規範的ゴールと経済的ゴールのせめぎ合い

そもそも、米国の保険制度は日本の保険制度は大きく異なります。Medicare(高齢者・障碍者医療保険)/Medicade(低位所得者向け医療扶助)で医療費がカバーされない一般的な労働者にとっては、雇用主が提供する医療保険/個人加入の医療保険などに頼る事に成ります。結果、ここ数年間の非保険者が人口の15~18%で移行しています。

冬学期に、人材派遣会社で働いた経験のある親友のMichaelと、新しいタイプの人材派遣会社の立ち上げを検討した時に、米国の一部の業種の雇用主にとっての最大のコストが医療保険保証やその履行に伴う訴訟に当てられている事を学び、「何という、ぐだぐだな医療制度の国なのだろう」と驚きました。IBIS World Reportによると、オバマケアの影響により、被保険者の数が増える事により、米国の歯科医療市場(歯科医師の歯科医業)は、2013~2018年において年率3.4%の成長が予測されています。国策に基づく単純な需要上昇に伴う歯科医業の成長は、関連産業に影響を及ぼし、歯科市場は米国でもまれに見る成長市場として位置づけられています。

但し、私は日本の歯科市場が、米国のやり方を周到すべきではないと考えています。他の先進国と比較した際に、日本の歯科治療費の個別単価が低い事は明確ですが、それと同時に日本の歯科医師の平均年収などを考慮すると、日本という社会において生きていく上で悪い職種とは言えません。継続的な歯科医療市場のデータの一部を切り取った分析に基づくネガティブキャンペーン(歯科医師の5人に1人がワーキングプアetc :実質的にSleeping Dr/研修医等を含む)、ワイドショー的に取り扱われる極端な歯科医院倒産等のケース、社会に実害を生んでいる歯科大学の教育/国家試験のあり方など、真摯に受け止め改善すべき構造的問題は多々ありますが、様々な正否を問わない負の情報の一人歩きを感じます。

実際に、米国のビジネススクールにいますと、しばしば歯科治療の相談を受けます。無論、米国のライセンスを保有していない為、簡単なアドバイス以上の事はできませんが、御家族/親戚の口腔写真を元に、私に真剣にアドバイスを求めてくるケースもあります。ビジネススクールに来る学生は、相対的に裕福な家庭の出身者が多いのですが、その彼等にとっても歯科治療費は凄まじく高いと認識されています。家族に総入れ歯を作ってあげたいのだが、$5000K(約50万円)で作れないか?と確認してきた友人もいました。(実際はそこまで高くはないです。)つまり、歯科治療費に対する感覚が日本国民と米国民では大きく事異なります。

口腔衛生状態/機能が、全身に与える影響については、論文が多々出ている所です。現在の米国の医療の中でも特に保険でカバーされていない事が多くアクセスしづらい歯科医療が生み出している状況を考慮すると、安易に米国型の医療保険制度を日本に導入し、医療のバリューチェーンの中で非常に重要な役割を果たしている歯科医療へのアクセスを下げるような政策を国策としてとる事は、国民の平均的な口腔衛生/機能の低下にダイレクトにつながります。強いては全身疾患率向上につながり、不要な医療費の上昇につながる可能性が高いことが考えられます。加えて、生活習慣病としての側面の強い歯科疾患に対しては、今まで以上に寄り添うような保険制度としていくべきです。

私が言いたいのは、予防/在宅/周術期医療(医科歯科連携)/一部、リスクコスト以下の治療については、総合的な医療費の上昇の抑制につながるため、追加/配分の変更を行い、保険適応ラインの再線引きを行い続けるべきであるが、歯科医師が潤う事を目的とした歯科医療保険制度改訂等としては行けないという事です。

別の側面から見ます。古いデータですがOECDによる1990年代後半の、国の所得格差を示すジニ係数(0に近づく程格差が小さい)を元に日本と米国を比較すると、日本:31.38/米国:35.67。また、相対貧困率でみると日本:15.25%/米国:17.09%となります。その後10年間の日本における貧富の差の急速拡大を考慮すると、現状は押して図るべしと言えます。その結果としての、現在の日本の所得格差を考えるに、世界に誇る皆医療保険制度を根本から崩し、単純に米国型の保険制度を周到する事は、歯科医師が潤うための戦略を取る事に等しい危険しかなく、結局医科/歯科間、国家単位での医療/他産業間、強いては国家間でのコストの押し付け合いにしか成りません。

無論、歯科医師の教育制度や、歯科医院の比較的システマイズされたマネジメント形式など(歯科医療マネジメント会社の存在)など、米国の制度や市場構造に学ぶべき点は多々あります。(いずれ、詳細を記載するかもしれません。)

米国型/韓国型/オーストラリア型など、歯科医師目線から見ると日本と比較して魅力的に移る保険制度を有する国は多々あります。しかし、大切なのは、豊かになりたいという個々人が持つ当然の思いに加えて(私は寧ろこれは賛成です。適切な向上心は、適切な技術の向上/経営努力につながり、個々のプレーヤーが患者さんに提供される医療の価値および総合的なサービスの価値を高める原動力となります。)、日本の医療保険制度の持つ光と陰を学び、医療戦略の重要な一翼としての歯科医療戦略を考えていく事だと思います。