米国の医療制度が直面している課題米国の医療制度が直面している課題
1. アクセス
2. 非効率な治療の提供方式
3. コストおよびコスト増加
: GDPに占める割合の高さと、占有率の急速な成長
4. Affordable Care Act(オバマケア)の影響

2.には相当な投稿回数がかかるため、3.の切り口から見た日本歯科医療へのテーゼを先に記載します。

米国においては、医療はGDPの17.9%を占めています。これは何と、日本円にして約280挑円という天文学的な数字です。(ちなみに歯科医療費のみでは米国12兆円/日本3兆円となります。)そして、これは1980年の約2倍のGDP占有率となります。つまり、米国においては、GDPにおける医療費の急激な上昇が見られるという事です。これは、日本においても同様です。現在の日本における医療費は38.6兆円(2011年度)で、GDP占有率は10%を下回ります。それでいて世界に誇れる日本の医療制度を米国民がうらやましがるのも仕方がない事です。

医療コストについて考える今回は、米国における医療費の上昇要因を切り口に考察するのではなく、何故、日本の総医療費の上昇に対して、歯科医療費が20年近くにわたり据え置かれているのかについて考察し、日本歯科医療に対するテーゼとしていきます。

少し話しが変わりますが、歯科医療関連のBusiness Planを練る為に、古いlaptopで蓄積していた情報を検索していると、歯科医師1年目だった頃に作り上げた”歯科医療市場の因果関係モデル”のスライドがたまたま出てきました。

このスライドから読み取れる当時の私の視野の狭さ/思考の浅さ/誤りの多さに苦笑しました(笑)現在の私の考え方とは大きく異なります。
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それから何年もたち、この世界はどう変わり、日本はどう変わり、日本の歯科医療市場はどう変わり、私自身どう変わったのでしょう。

日本の歯科医療市場は、ある側面から見ると、各世代が痛みを伴う現状改革をできなかった事を、次世代への負の遺産として相続し続けているように見えます。それは国家レベルで見ても同じ事が言えます。昔、内閣府の方と話をさせていただいた際に、歯科のみならず多くの局面で制度疲労が起きている事について教えて頂きました。

歯科医療費については、実質経済の成長率/人口動態の変化/医療費全体としての費用対コスト削減効果(ある歯科治療費の基本単価を100円追加した事で、その治療の効果が全身健康に好影響を及ぼし医療費全体として見ると200円医療費が削減されましたという場合、実行する価値はありますよね?例えば、予防歯科に力をいれて、より多くの歯が残ったなら、より健康的な人生が歩めるため、医療費総額は下がります・・・というイメージです)などを考慮した増加はなされるべきだと思います。そう考えると、現在の国家としての歯科医療費の据え置き及び戦略は不適切だと言えます。

その一方で、歯科医療が社会へ与えている価値が ”削る/埋める/被せる/抜く/補完する”であり、祖父の世代、父の世代、私たちの世代で、材料の進歩/一部Technologyに伴う変化等を抜きにして、本質的にほぼ同じ事を行っているのであれば、先述の観点を越えて歯科医療費を拡大する事は国家医療戦略として不適切です。Implant やInvizaline等、その時々のInnovativeな新治療を自費治療として扱い、歯科医院の重要な収入源としている現状を考えると、国費からの歯科保険医療費上昇に期待する事も不適切です。

歯科医師の仕事を否定しているのではありません。”削る~補完する”は歯科医師として誇りに思うべき大切な仕事です。言い換えにすぎませんが、保険の範囲内でInnovativeな新治療を組み込めず、それら新治療は自費治療として提供される事が慣行化している市場であるなのならば、保険を通じた新しい価値の提供ができてないことになります。それはつまり、歯科医療費の経年変化の不適切さを説明する際によく用いられる ”医科医療費の経年的変化との比較論” 等では、歯科医療費上昇を求める事はできないという事です。

この慣行は、歯科医師が、Artist化し自己満足治療に走り安い土壌を生みますが、日本歯科医療よってたつ根本的な構造の一つである以上、簡単に否定できませんし容易な改革も期待出来ません。

今、日本歯科医療界のリーダーとなる人が行うべきは、
1. 適切な観点から、歯科医療費の増加を図る事
2. 歯科を医療バリューチェーンにおける最重要項目と捉え、ケアサイクルを通じた価値を高められる医科歯科連携を促進する事
3. 歯学部・歯科大学の統廃合/構造・教育改革
の3点であるように思います。

1.は、社会に提供する歯科の価値をシステムレベルから高めます。
2.は、歯科医師のProfessionalとしての個人レベルでの誇りを高め、社会に提供する歯科の価値をシステムレベルから高めます。
3.は、1.2.を促進し、さらに歯科が日本社会に対して生んでいる非効率を改善します。本年度の歯科医師国家試験の合格率を見るに、今の日本の歯科界は、現世代の現状維持のために、次世代を犠牲にしているようにも見えます。

日本の国際的プレゼンスは急激に下がってきています。日本の未来を考えるに、その一部である歯科も変わっていかなければ行けません。私は、個としての利益を求めることは人間の本質であると思いますし、1産業としても否定出来ないものであると思います。その一方で、個の利益より全体の利益を見つめることも大切です。特に、今の日本歯科医療界のリーダー、さらに理想論では個々の歯科関係者が持つべきは、こうした視座なのではないかと思います。